これも経済学だ

これも経済学だ! (ちくま新書)

これも経済学だ! (ちくま新書)

経済学を用いて伝統芸能、宗教、福祉等を合理的に説明する、との触れ込みだが、欧米の類書の二番煎じで、分析の切れも冴えない。
郵政解散で小泉自民党が圧勝した理由は、善悪二分法の分かりやすい戦略を採用したことで、投票コストが下がったから(p.212)といったご隠居の政治談議みたいな記述もあったりと、論証の説得力もいまひとつ。
「世の中には感謝されながらお金をもらえるという幸運な仕事に就いている人たちがいる。医師や教師がそれにあたる。なぜ感謝されるかというと人助けをしているからだ。人助けに料金は相応しくない。」(p.112)という記述も経済学的にはおかしな話で、感謝(=効用)が存在しなければ、そもそもこの世の大多数の取引は存在していないはずである。
著者が相撲や障害者を好んで分析対象にしているのも、メインストリームでは相手にされないので、競争の少ないニッチ分野に閉じこもっているからではないか、との疑念が生じてしまった。