ハーモニー/伊藤計劃

未来には人類から「意識や感情が消失」して世界に調和(ハーモニー)が訪れる、とさらりと言われましても、永井均先生をもってしてもその「意識(=私)」が何なのかわからなくて皆さん七転八倒しているわけで、例えば「真っ白な黒」という文章が文法的には完璧に成立しつつも意味不明なように、想像困難な状況を「人類から意識が消失」の一言で処理されてもちょっと困った。
主人公の父親がさらりと死んでしまうのにも若干違和感を感じたけど、もしかしたら本書は未完で、著者には時間がなかったのかも。だったらしょうがない。
著者のイタズラか、地の文章にさりげなく涼宮ハルヒの台詞「ただの人間には興味がない」(20頁)だとか、小説の題名「好き好き大好き超愛してる」(20頁)「たったひとつの冴えたやりかた」(44頁)等が出現する。自作の「虐殺器官」(159頁)も。英訳↓たいへんそう。

Harmony
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posted with amazlet at 10.02.12
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