閉じた本/ギルバート・アデア

閉じた本 (海外文学セレクション)

閉じた本 (海外文学セレクション)

語り手の独白(イタリック)と会話(鉤括弧)の2種類の文章しか登場しない風変わりなスタイル。
自動車事故で眼球を失ったブッカー賞作家が4年のブランクを経て新作を発表するために口述筆記者を雇う。ところが、募集に応じてきたその男はかつての児童虐待の相手で、作家は事故死を装って復讐されるも、独白だと思っていた文章が実は日記であることが明かされ、殺人が露呈する。
通常、翻訳者というものは、現著者と直接メールのやりとりをして疑問点を解消したり、本国の出版社から資料をどっさり送ってもらったりと、我々一般人には享受できない特権的待遇をフル活用するものとばかり思っていたが、どうも違うらしい。「訳者あとがき」で、読んでみたいのに著者の初期作品がアマゾンにすら登録されてないのは何故だろう、とか(著者に借りれば)、単なる素人のぼやきのようなことが縷々綴られていてかわいい。
結論としては、イタリックを縦書に使うと大変悲惨なことになることがわかった。